2023年12月18日月曜日

増田屋ソニコンロケット

 このおもちゃは1950年代のもので、世界初のラジコン自動車と同じ時期に増田屋から発売されたものです。無線操縦の媒体としてラジコンが電波を利用したのに対して、ソニコンは音波を利用しています。このロケットの他に、バスも出ています。


持ち込まれたのは下部メカ部分のみでした。非常にきれいな個体です。


左の円柱形部分がメカ、中央黒い円柱がリレー、その下は電池ボックス、右の円柱形部分が音波の受信部となっています。

動かないとのことでした。

この時期の古いおもちゃの故障原因定番は接点の酸化皮膜です。スイッチ、電池受け金具、音波受信部中央の接点、そして、場合によってはリレー内部の接点をみます。

まずはスイッチ。こんな具合でした。酸化皮膜ができて黒ずんでいます。


磨いた後は


反対側の接点

電池受け 右before 左after


ダイヤフラム中央の接点 2000番の紙やすりでそっと磨きます。


この3カ所の対応で動くようになりました。

お客さんはモーターの不具合を心配していたのですが、不具合はありませんでした。古いものはグリスが固着することがあり、心配もありうるのですが今回は固体全体の状態がよく、セーフでした。

ところで、音波でどうやってコントロールしているかです。

最初の写真、右側の円筒部分で同心円状に見えるのはダイヤフラムと呼ばれるもので特定の振動数で振動します(1040Hz付近)。通常は、ダイヤフラム中央の接点にT字型の金属が触れていて導通があります。ここを流れるのは直流電流で、リレーの1次側コイル(電磁石)を磁化し、内部のスイッチを引きつけて大電流を流しています。これが前進の状態です。

ここで1040Hzの笛を吹くと、ダイヤフラムが共鳴して振動します。それにより接点がON-OFFを繰り返すことになります。つまり電流が直流ではなくなるのです。するとリレーのコイル(電磁石)は極性を失うかたちになり、接点が離れて反対側の接点につながり、2次側の電流の向きが逆転します。こうしてロケットは後進するわけです。

回路図メモ


これがリレー ①この個体のもの 1回路で2投(2接点)のタイプ

       モーターは1.5V駆動


 <参考>リレー②別固体ソニコンのもの 2回路2投(2接点)タイプ

     モーターが3Vで駆動 回路も若干違っています 


後進するとき、片方の車輪だけにブレーキがかかる仕組みがあって、同時にターンをすることになります。車輪が目的の方向を向いたら笛を止めると前進になり、その方向に進みます(直進)。

しかし、車輪が今どの方向を向いているかは外からは見えません。そこでメカ部分の上にシャフトが立っていて、車体外部にアンテナが付いています。そのアンテナの向きがイコール車輪の向きということです。

後進は文字通り後ろに進むだけではなくハンドルの役割も果たしていることになります。

無線操縦への憧れ、遊び心がベースとしても、強い執念とも言えるものを感じました。頭が下がります。

ラジコンも含めてですが、当時の優秀な人材がかなりおもちゃ産業に流れていたのではないかと思います。そう思わせるだけのおもちゃ群です。

*参考 ソニコンバス-1 (状態は悪い・・)


ソニコンバス-2

ソニコンバス-3














2023年12月3日日曜日

金属タガが悪さ 軸穴補修 brightstarsのおもちゃ  

 brightstarsのアルファベットポップアップというおもちゃです。

頭を押し下げると、バネの力で戻りながら下の緑のテーブルが回り、3回目で置いたボールが
はじけ飛ぶというものです。
症状は、「押しても回らない」でした。
結果的には中のギア割れが2カ所ありました。傘歯車のため現物に金属タガを嵌めて修理しました。
回るようになったのですが、安定しない。カリカリとギアが滑る音がする。ギアが「逃げて」噛み合わせが「遠い」のではないかと推測した。
中を開いてよく観察してみた。ギアが逃げる場所は2カ所想定できた。
1カ所は軸穴の摩耗(拡大)で、以前の修理で対応してあった。ハトメを入れてあった。以前修理したのを思い出した。修理前の状態と
修理後(途中)の状態

もう1カ所は、傘歯車の「逃げ」で、原因は嵌めた金属タガが軸受け回りの壁をえぐっていたためギアが逃げていた。金属タガのようす
           抉られた状態

修理は、えぐられた分の厚さと半径のワッシャーを入れて訂正した。

金属タガは要注意ということでした。
このおもちゃは施設のもので、人気があり、使用頻度が高い。どうしても負荷がかかってしまうのでしょう。



2023年11月30日木曜日

ポテトヘッド ディズニー

 ディズニーのキャラクターでポテトヘッドと言うそうです。」


こどもさんが大事そうに持ってきました。

開けてみるとギアが2個割れていて、他に2個がひび割れ状態でした。

とりあえず割れたものを交換しましたが、仲間のドクターの分解したものを引き継いだので元のギア構成がわからず苦戦しました。試行錯誤で何とかできてほっとしました。









後で気がついたのですが、ネットではプレミアが付いて大変な値段になっていました。
あぶないあぶない。

ところで最近は、おもちゃがほしくて買うのではなく投機目的で買うのが 広がっているように感じます。おもちゃの世界とは違った世界が浸透してきているということです。マニアの方が嘆いていました。それでも、おもちゃを大事にする人がいる限りドクターの存在価値は続くと思います。





2023年9月23日土曜日

スントCORE(時計)のコマンドと表示

 番外編です

高度計がほしくてスントの時計(suunto CORE)を中古で手に入れました。

使い方がわからず、ネットで説明書をダウンロードしたのですが何ともわかりにくい。

ネットでも使い方がわかりにくいという指摘がいくつも見られました。

困ったあげくボタンのコマンドと表示のツリー構造を図に起こしてみることにしました。



我ながらよくできました。・・自画自賛・・

2023年6月28日水曜日

瞬きしなくなった眼球 モンチッチ

 お母さんが持ち込みました。自分がこどもの頃かわいがったモンチッチ、大事に持っていたのですが、こどもが興味を持ってかわいがるのでなおしてほしいと。不具合は右眼が瞬きしないというものでした。


よくあるケースで、内部の軸折れと推測し、眼球をまず取り出します。頭部をはずし、首の穴から眼球を固定してる裏側の壁を切開し、そこから取り出します。



予想どおり、軸折れでした。太めのゼムクリップで再建します。固定は今回はプラリペアです。

場合によっては折れていない方もカットし、左右つながった長いピンを取り付けてしまう方が動きがスムーズになることがあります。

セットは、取り出しの逆で、首の穴から「袋」に押し込み、裏側をホットボンドで固定します。


無事直りました。右目がよく動く分、今度は左目の動きがぎこちなく感じるようになったのですがこのままで渡します。








初めて見たプラレール

 プラレールもいろいろなバージョンがありますが、先日初めて見た仕組みがあります。

プラネタリ-ギアを使ったものでした。


プラネタリ-ギアはコンパクトにでき、減速比を大きくできることから実車にも使われています。

おもちゃではBRIOで使われていたのを見たことがあります。興味が湧いて中古品を買って持っています。






2022年7月5日火曜日

SANKYOオルゴール20弁(古いタイプ)

 SANKYOオルゴールの修理を頼まれました。(写真は修理後)

40年くらい前のもので、耳の内側や襟のレースがボロボロ、軽く触ると崩れていきます。

ワンピースの襟ぐりはゴムが固化し、割れているため広がりっぱなしでした。ムーブメントは20弁の古いタイプです。

ゼンマイを巻いても途中でギアの滑る音がして空回りしてしまいます。このタイプは

何度か同じ症状を見ました。原因は写真のギアの部分で歯飛びするのです。歯飛びの原因はというと、①ドラム側の平ギアの固定が外れた。②風車に近い方の組み合わせギアの組み合わせ部分のカシメが緩んだ。③風車金具を固定するカシメが緩んだ。これらによりギアのかみ合わせが緩むのです。

この場合は①と②でした。


①は今回はギアを固定するプラ部分も劣化で完全に剥がれていたため接着で対応しました。(以前極小ビスで対応したことがありましたが、スペースの余裕がなく無理を感じました)この場合プラ部分の位置が決まっていて、位置合わせ(深さ)は大切です。

②は圧入で再固定ですが、うまくしないとギアや軸を変形させてしまい厄介です。一度はトンカチで叩き入れようとして失敗したことがあります。ここでは真鍮ギアを当てて保護しつつ圧入しました。



さて、これでよしと組み立てたところ、相変わらずギア滑りが生じました。

原因はおそらくドラムの軸がすり減ってドラム自体が外へ逃げ、ギアの間隔が広がってしまうと推測しました。軸を再生はできないので、軸受けがあるスチールの香箱をわずかに動かして再固定することにします。(写真はプラ製香箱のもの)


香箱固定のカシメを削り取り、M2のビスで固定します。このときゆるめに仮固定した状態でオルゴールを鳴らし、香箱をわずかに動かしなから、歯飛びせず、きつすぎずのところで本固定します。最後はネジ、香箱を接着剤で固定しておきます。

それで歯飛びによる空回りががなくなりました。

この作業ではドラムを外す必要があります。このタイプは頭が引っ込んでいて面倒です。ドラム側の少し見えている部分に細いラジペンを入れて回す方法で頭が出たところで刃物で切り込みを入れドライバー用の溝を作りました。(写真は以前の方法で台座ごと刃を入れ、ドライバー溝を作製したもの)



この修理ではあらかじめ櫛歯を外しておきます。そうしないとドラムが急回転して櫛歯を折ってしまうことがあるのです。この点は先輩ドクターからよく注意されていました。櫛歯が折れるとその曲の復活はほぼ不可能になります。

このオルゴールを持ち込んだのは中年の男性でした。少し話している内に、これは奥さんの形見の品と分かりました。奥さんはつい2,3ヶ月前に急に亡くなったのだそうです。まだ53歳だったそうです。子どものころから大事にしてきたものだったそうです。亡くなった生々しさからまだ冷めやらず痛々しさを感じました。そんなことがわかって、修理にも気合いが入りました。


偶然にも同じ時期に同じタイプのオルゴールが入ってきていました。珍しいことです。症状と原因は同じでした。