このおもちゃは1950年代のもので、世界初のラジコン自動車と同じ時期に増田屋から発売されたものです。無線操縦の媒体としてラジコンが電波を利用したのに対して、ソニコンは音波を利用しています。このロケットの他に、バスも出ています。
持ち込まれたのは下部メカ部分のみでした。非常にきれいな個体です。
左の円柱形部分がメカ、中央黒い円柱がリレー、その下は電池ボックス、右の円柱形部分が音波の受信部となっています。
動かないとのことでした。
この時期の古いおもちゃの故障原因定番は接点の酸化皮膜です。スイッチ、電池受け金具、音波受信部中央の接点、そして、場合によってはリレー内部の接点をみます。
まずはスイッチ。こんな具合でした。酸化皮膜ができて黒ずんでいます。
磨いた後は
反対側の接点電池受け 右before 左after
お客さんはモーターの不具合を心配していたのですが、不具合はありませんでした。古いものはグリスが固着することがあり、心配もありうるのですが今回は固体全体の状態がよく、セーフでした。
ところで、音波でどうやってコントロールしているかです。
最初の写真、右側の円筒部分で同心円状に見えるのはダイヤフラムと呼ばれるもので特定の振動数で振動します(1040Hz付近)。通常は、ダイヤフラム中央の接点にT字型の金属が触れていて導通があります。ここを流れるのは直流電流で、リレーの1次側コイル(電磁石)を磁化し、内部のスイッチを引きつけて大電流を流しています。これが前進の状態です。
ここで1040Hzの笛を吹くと、ダイヤフラムが共鳴して振動します。それにより接点がON-OFFを繰り返すことになります。つまり電流が直流ではなくなるのです。するとリレーのコイル(電磁石)は極性を失うかたちになり、接点が離れて反対側の接点につながり、2次側の電流の向きが逆転します。こうしてロケットは後進するわけです。
回路図メモ
これがリレー ①この個体のもの 1回路で2投(2接点)のタイプ
モーターは1.5V駆動
<参考>リレー②別固体ソニコンのもの 2回路2投(2接点)タイプ
モーターが3Vで駆動 回路も若干違っています
後進するとき、片方の車輪だけにブレーキがかかる仕組みがあって、同時にターンをすることになります。車輪が目的の方向を向いたら笛を止めると前進になり、その方向に進みます(直進)。
しかし、車輪が今どの方向を向いているかは外からは見えません。そこでメカ部分の上にシャフトが立っていて、車体外部にアンテナが付いています。そのアンテナの向きがイコール車輪の向きということです。
後進は文字通り後ろに進むだけではなくハンドルの役割も果たしていることになります。
無線操縦への憧れ、遊び心がベースとしても、強い執念とも言えるものを感じました。頭が下がります。
ラジコンも含めてですが、当時の優秀な人材がかなりおもちゃ産業に流れていたのではないかと思います。そう思わせるだけのおもちゃ群です。
*参考 ソニコンバス-1 (状態は悪い・・)
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