2025年2月11日火曜日

優しい音色のおきあがりこぼし

 幼児用のおきあがりこぼしです。

揺らすと揺れながら優しい音を出します。薄いセルロイド(プラ)のキューピーさんのものが昔からありますが、これは厚みのあるプラスチックで、がっしりしています。Combi製です。
揺らすとガタガタと内部で重いものがぶつかるだけで音がしません。
内部を見るには接着を剥がすわけですが、ここでは薄刃ののこぎりでカットしました。
見ての通り音を出すパーツがバラバラでした。
音源は円筒の中のピアノ線。長さが違って音程が違います。
右の10円玉を針金でつるしたようなのが揺れてピアノ線をたたき、音が出ます。

振り子状のものをつるす糸も切れていました。
振り子は細いステンレス線でつるしました。
部品をセットした状態
ピアノ線が植わっている土台は重い鉄の塊で、起き上がりこぼしの錘になっています。
壁が厚いのがわかります。切断はそれなりにたいへんでした。
接着して結合しました。
電気的な音にはない優しい音色です。

お母さんのお友達からの頂き物だそうですが、優しい音色を覚えていて、何とか復活させてほしいという依頼でした。まもなく自分にも赤ちゃんが生まれるそうです。











2025年1月31日金曜日

おやすみホームシアター LED点灯回路増設

よく持ち込まれるおもちゃです。いろいろなバージョンがあります。これはプーさんのもの。


 絵が動かない、途中で止まる(電源が切れる)ことがあるということでした。

定番のディスクの接点を洗浄しました。

これに加えモーターに手を入れて絵が動くようになりました。
そして何度か動きをチェックしているうちに、「途中で止まる(電源が切れる)」現象が出ました。原因を調べているうちライトが付かなくなってしまいました。音は正常で光だけが出ません。LEDは問題ないため回路上の問題でしょう。途中で止まることと合わせてIC不良を疑いました。
AB17と印字されたICはおそらくLEDドライバーでそこに問題があるのかもしれませんがチェックする知識がありません。
このまま返却も考えましたが、他は正常なためもったいない。お客さんの了解を得て、別回路を増設してLEDを点灯させることに。
LEDはパワーLEDで規格不明ですが、秋月の3Wのものだと数百mAの電流値のようです。そこで電源から直接引き、350mAの定電流ICを入れてコントロールすることにしました。
  電源+(6V) → 定電流IC → スイッチ → LED → 電源ー という回路です
ICは秋月の350mAのものを使いました。
これで無事絵も音も出るようになりました。スイッチが2つになりましたが。
電池の消耗は激しそうです。


絵を出してみて気になることが1つ。絵がぼけている。よく見るとレンズが曇っているように見える。レンズ部を分解すると不思議なシートが出てきてそれが曇ったものなのです。

これを外すとクリアな絵が出るようになりました。それにしてもこのシートは何のためにあるのだろう?

余談
回路増設してライトが付くのを確認し、本来のスイッチを入れたところすぐに電源が全て切れてしまう。スイッチを入れる順番を変えても同じ。シャットダウン後再度試しても同じ現象が出るから回路が壊れたわけではない。LED回路の負荷が大きすぎるのか?LED点灯状態で電流値を測るとおよそ350mA。本来のスイッチだけだと数十mA。問題になる値じゃない。定電流ICの電流値を下げてみるかなどと考えつつ???  まさか電池ではと思い、チェックすると1.1V程度になっていました。新しい電池で試すと正常動作しました。よくある失敗のパターンです。

以上














2025年1月24日金曜日

ぽぽちゃん風人形 目が動かないのと片腕欠損修理

 頭部、腕、脚はソフビで、胴体は布で出来ています。大きさもぽぽちゃんほどです。

目が動かない、腕が紛失、汚れが酷いという症状です。


眼球は定番のピン折れが原因です。内側から眼球部を切開して眼球を取りだし、ピンはゼムクリップで作って交換します。

ソフビ部分の汚れはアルコールとアンモニアで洗浄です。眉、口、頬のペイントが落ちないようその部分は避けます。写真左脚は洗浄後 右脚は元のままです。実物は写真以上に汚れています。布部分は手に負えません。

問題は腕です。針金とキルト用綿で骨組みを作り、「石塑粘土」(石粉粘土というものもあるようですが)で形成しました。粘土は買ってきたままでは固すぎて造形できそうにないため、水で緩めながらよく練りました。結果的にキルト綿は指などの細かい部分には不適でした。
色塗りはアクリル絵の具ですが、色作りに苦労しました。シロウトの限界を感じました。
胴体への取り付けは、縫えないためホットボンドで貼り付ける形にしました。
そうしてできあがったのが・・といきたいのですが、うっかり写真を撮る前に返却してしまいました。またやった、です。

持ち込んだのは年配のご夫婦で、娘さんが子どものころにカナダで買ってあげたものだそうです。傷みが激しく、かといって愛着のあったものなので捨てられもせず押し入れで眠っていました。娘さんがグアムにいて、懐かしがって、子どもに使わせたいのでなおるものなら直して送ってほしいと言われました。「これで娘に送れます」といって、帰りには慈しむように抱きしめて帰られました。
費用は実費を請求したのですが、それでは申し訳ないと数千円を出されました。それは遠慮して実費だけいただきました。こういう志は時々あるのですが、最近はこれはいただいた方がよかったのではとも思います。というのは、志を出していただくことでそのお客さんはおもちゃ病院活動を支援したことになるわけです。ボランティアでなくなるのではなく、むしろボランティアが広がったということです。

モノとしては新しいモノの方が見栄えもするのですが、そうではなくこれなんだという気持ち。それはおもちゃが無機的なモノではなく歴史を持ち、思い出とつながっているかけがえのないものというのをつくづく感じました。

この先は、実は・・の裏話

受け付けたときこのご夫婦には正直あまりいい印象を持たなかったのです。汚れや腕の欠損の修理を当たり前のように言うからでした。上から目線を感じてしまったのです。ただ、今はグアムに暮らす娘さんの思い出のおもちゃで、直して送ってやりたいというご夫婦の気持ちは伝わってきました。自分の技術的なチャレンジ精神もあって引き受けました。返却の際に説明をして渡すのですがその時もネガティブな気持ちを引きずっていてさらっと説明してお返ししました。その時に旦那さんが寄付を申し出てくれたのでした。なおった人形を受けとってご夫婦がどんな気持ちだったのかを目にしたのは返却スタッフのIさんでした。二人が部屋を出て、奥さんがトイレに入りました。旦那さんが外で待っていたのですが、その時両腕で抱きしめて慈しむように見つめていたというのです。旦那さんはその時何を思っていたのでしょう。Iさんにはその姿が何とも言えず美しく感じられて、その日に私にメールして教えてくれました。Iさんはボランティアで参加し始めて数ヶ月ですが、「わたしはこんな場面はじめて見ました!感動しました!Drには是非知らせないととおもいました。」と。
それを聞いた私は、そんなに喜んでもらえてよかったという気持ちと同時に、複雑な気持ちが湧きました。Iさんから教えてもらわなければ何も見えず、感動もありませんでした。邪魔をしていたのは最初のネガティブな(ちょっと怒りを含んだ)感情でした。共に喜び感動できる体験と冷ややかにものだけ直して渡すのとの何という違い。教えてくれたIさん、喜んでくれたご夫婦に感謝です。

こういうことがあると、おもちゃは子どもの玩具というだけでなく大人にとってそれ以上の存在だと感じます。

以上






プラレール(モノレール)レール連結部欠落修理例

 モノレールのレールのジョイント部分のツメが半分折れて紛失していました。

小さな子はレールを平行移動して外すことが出来ず、「折る」ようにして外そうとするためどうしても無理な力がかかり折れてしまうようです。定番です。

単純なレールなら中古品で済ませるのですが、今回はモノレールの、Go-Stop機構の付いたものなので修理することにしました。

折れたのがツメの片方半分だけなので、当初は欠けた部分だけを他のレールから切り出して結合しようとしたのですが強度が出ず失敗しました。次の方針は強度保持ということで正常部分を他の通常のレールから切り出し、一方破損品を同じ位置でカットし、2個イチとすることに。固定は両側から添え板を当て、ビスで固定です。モノレールの動きに干渉しないよう事前チェックしておきます。

当て板は裏表溝ごとで、それぞれ3枚。

気を遣ったのは16個のビス穴の位置を重ねる3枚とも同じにする点です。

まず表側を加工します。当て板にビス位置を記入します。位置を合わせてまず1カ所の穴をあけ、ビスで仮固定します。2カ所目もあけたら仮固定。そうやって表側を固定できたら組み合わせパーツを当てて同じように1カ所穴をあけ仮固定・・と進め、裏側も同じように位置合わせし、仮固定しながら穴をあけていきます。

そうすると重ねた3枚とも同じ位置に穴があきます。

ビスの半分は裏側から止めてあります。頭の低いビスなので車両やレール固定具に干渉しません。

ところで、Go-Stopの仕組みですが、写真下側に少し見える数枚の小さなギアがフリーになるとストップ、固定されるとゴーになっています。

以上

























ボールジョイント修理例とプラリペア養生

 合体ものの部品です。(写真は修理後)


ボールジョイントに無理な力を加えたためソケット部が欠けて紛失してしまいました。

写真は修理後

修理の方針は、欠けた部分の形をプラ棒から削り出し、プラリペアで強化固定するというもの。修理後はこんな感じです。青のプラリペアなのであまり目立ちません。

欠けたパーツ作製に当たって、ボールが直径4.8mm、シャフトが4mm、ソケットの溝はシャフトの可動部が4.3mm、後で組むときボールを押し込む部分が直径4.6mmです。
問題はボールを受ける部分でした。丸棒の片方からΦ4の穴を他方からΦ4.5の穴を途中まであけます。4.5の穴の奥をボール状の歯が付いたリューターでえぐります。それがボールの受け部分になります。ボールに当てながら調整して仕上げます。


形からして強度に不安があったのですが、結果的にはかなり実用性があるレベルと思います。

プラリペアに関して気がついたことがあります。
これはとても固く強度が出るうえ、固まるのが早いのは知っていたのですが、厚く盛り上げた場合には要注意です。表面は固まっても内部は柔らかい状態です。そこで無理をすると破損します。今回の場合、48時間後でも固いものを押しつけると変形する状態です。何とか変形がなくなったと思えたのが3日経ってからです。しかし、安全をみると1週間は養生した方がいいのではと思います。内部まで固まれば今回のようなジョイントソケットでも実用的な強度が出ます。