2023年12月19日火曜日

ユメル修理 眼球部まで分解手順

 ユメル、ネルルはよく持ち込まれます。年配の方が我が子のようにかわいがっていて、まるで家族のようです。何としても直してほしいという気持ちが伝わってきます。直す方も気合いが入るというものです。

眼球部、メカ部分に手を入れる場合を想定して、分解手順を記録しました。

<下準備>

 ①後頭部手縫い部分の糸を切り切開する。綿を取り出す。

 ②電池ボックス周辺を固定しているタイラップを切る。(写真の「この接合部も切開する」は必ずしも必要ではありません。切開した方が楽ですが切開しなくても作業は進められます。)

 ③頭部中央を縦に巻いているタイラップを切り、綿を取り出す。

手順1 電池ボックス内外分離 (裏側ビス4本)


手順2 壁(ピンク)と基板をスライドさせてはずす


手順3 基板を外す (ビス)


手順4 壁(ピンク)を頭部から外す (ビス)


手順5 首回りの押さえパーツ分割 (ビス)


手順6 頭部分割 (ビス)


手順7 眼球ブロック外す (ビス)

手順8 ギアボックスを外す (ビス)

    *眼球を動かすアーム先端を頭部から外す


手順9 ギアボックスは3ブロックからなる

  (1)アーム側カバーを外す (ビス)

     *中央のギアシャフトは反対側まで貫通し,プーリーが付いている。このプーリ   

      ーはモーターからのベルトで駆動される。無駄にギアを動かすとベルトが外れ

      てしまう。


  (2)モーター&プーリー側

     *アーム側中央のギアからのシャフトにプーリーが付いている

<組み立て>

  組み立ては逆の手順。最後の電池ボックスははめ合い注意。中のリード線を噛ませない 

  こと、ツメが当たりやすいので確認して蓋をはめること。


頭部に関わる故障で多いのは、眼球を動かすギア割れ、モーター不良、眼球を動かすアームが押す小さなスイッチ(4個)の導通不良など。これらが不良だと目が動かない、初期立ち上がりがうまくいかないなどの症状が出る。 また、まつげの剥離も多い。現物があれば接着するが、まぶたの内側にしっかり接着する必要があるため分解が必要。手軽に外からというのは強度が保てない。

その他、電池受けの錆。この電池ケースは内部に配線があり、そこが錆びると正常電圧があっても電流が流せないため不具合を生じることがある。しっかり接着してあるため分解はリスクを伴う。左右の手のスイッチ不良もよく見受けられる。スイッチ自体がだめな場合のほか、リード線の経年劣化で被覆が固化し折れて断線するケース、ハンダ剥がれなどがある。

※後日譚:後日ユメルの修理依頼がありました。動かなくなったというものでした。おばあちゃんが先日亡くなり、遺品整理をしていたところ押し入れからこの人形が出てきた。お孫さんが小さい頃にこの人形の声をおばあちゃんと一緒に聞いた覚えがあり、なんとかもう一度聞きたい。直してほしいというものでした。

電池受け接点はきれいだったのでモーターかもしれないと見当を付けました。分解手順をここで整理していたこともあり、後頭部縫合部分の糸を切って・・とやり始めたのですが、ふと電池ケースを取り出すと・・、参った!電池4本必要なところ、ケース裏側の2本が入っていない!急ぎ追加して試すと正常動作するではありませんか。 早とちりは失敗の元を地で行ってしまいました。






手に入りにくいハロゲンランプ対策

 古いクリスマスツリーの飾りが持ち込まれました。明かりが点かないというものでした。

光源のハロゲンランプが切れていました。

仕様は 「6V 5W G4口金 Φ35反射鏡付き」ですが、ネットでいくら探してもヒットしません。あるのは12V用か反射鏡無しのものばかりです。

やむを得ず「12V 20W」を試したところ、ほぼ実用的な光が得られました。20Wとしたのは、規格に対して電圧が半分、ということは電流も半分、つまり電力は4分の1になるので逆算して、電力を4倍のものとしたわけです。

知識のある方に聞いたところ安全上も問題はないとのことでしたが、自分ならLED化するだろうというアドバイスを得ました。

ただ、このおもちゃはACアダプターで9Vの交流電源になっています。交流対策、電圧電流コントロール、放熱が必要で、その辺は教わらないと・・・

無事直って、クリスマスに間に合うよう返却できました。
受け付け時に、ランプが手に入らないのはわかっていたので当初断ったのですが、思い出のあるツリーで時間がかかってもいいから是非と言われ引き受けたものです。とても喜んだ姿を見てこちらもうれしくなりました。


2023年12月18日月曜日

増田屋ソニコンロケット

 このおもちゃは1950年代のもので、世界初のラジコン自動車と同じ時期に増田屋から発売されたものです。無線操縦の媒体としてラジコンが電波を利用したのに対して、ソニコンは音波を利用しています。このロケットの他に、バスも出ています。


持ち込まれたのは下部メカ部分のみでした。非常にきれいな個体です。


左の円柱形部分がメカ、中央黒い円柱がリレー、その下は電池ボックス、右の円柱形部分が音波の受信部となっています。

動かないとのことでした。

この時期の古いおもちゃの故障原因定番は接点の酸化皮膜です。スイッチ、電池受け金具、音波受信部中央の接点、そして、場合によってはリレー内部の接点をみます。

まずはスイッチ。こんな具合でした。酸化皮膜ができて黒ずんでいます。


磨いた後は


反対側の接点

電池受け 右before 左after


ダイヤフラム中央の接点 2000番の紙やすりでそっと磨きます。


この3カ所の対応で動くようになりました。

お客さんはモーターの不具合を心配していたのですが、不具合はありませんでした。古いものはグリスが固着することがあり、心配もありうるのですが今回は固体全体の状態がよく、セーフでした。

ところで、音波でどうやってコントロールしているかです。

最初の写真、右側の円筒部分で同心円状に見えるのはダイヤフラムと呼ばれるもので特定の振動数で振動します(1040Hz付近)。通常は、ダイヤフラム中央の接点にT字型の金属が触れていて導通があります。ここを流れるのは直流電流で、リレーの1次側コイル(電磁石)を磁化し、内部のスイッチを引きつけて大電流を流しています。これが前進の状態です。

ここで1040Hzの笛を吹くと、ダイヤフラムが共鳴して振動します。それにより接点がON-OFFを繰り返すことになります。つまり電流が直流ではなくなるのです。するとリレーのコイル(電磁石)は極性を失うかたちになり、接点が離れて反対側の接点につながり、2次側の電流の向きが逆転します。こうしてロケットは後進するわけです。

回路図メモ


これがリレー ①この個体のもの 1回路で2投(2接点)のタイプ

       モーターは1.5V駆動


 <参考>リレー②別固体ソニコンのもの 2回路2投(2接点)タイプ

     モーターが3Vで駆動 回路も若干違っています 


後進するとき、片方の車輪だけにブレーキがかかる仕組みがあって、同時にターンをすることになります。車輪が目的の方向を向いたら笛を止めると前進になり、その方向に進みます(直進)。

しかし、車輪が今どの方向を向いているかは外からは見えません。そこでメカ部分の上にシャフトが立っていて、車体外部にアンテナが付いています。そのアンテナの向きがイコール車輪の向きということです。

後進は文字通り後ろに進むだけではなくハンドルの役割も果たしていることになります。

無線操縦への憧れ、遊び心がベースとしても、強い執念とも言えるものを感じました。頭が下がります。

ラジコンも含めてですが、当時の優秀な人材がかなりおもちゃ産業に流れていたのではないかと思います。そう思わせるだけのおもちゃ群です。

*参考 ソニコンバス-1 (状態は悪い・・)


ソニコンバス-2

ソニコンバス-3














2023年12月3日日曜日

金属タガが悪さ 軸穴補修 brightstarsのおもちゃ  

 brightstarsのアルファベットポップアップというおもちゃです。

頭を押し下げると、バネの力で戻りながら下の緑のテーブルが回り、3回目で置いたボールが
はじけ飛ぶというものです。
症状は、「押しても回らない」でした。
結果的には中のギア割れが2カ所ありました。傘歯車のため現物に金属タガを嵌めて修理しました。
回るようになったのですが、安定しない。カリカリとギアが滑る音がする。ギアが「逃げて」噛み合わせが「遠い」のではないかと推測した。
中を開いてよく観察してみた。ギアが逃げる場所は2カ所想定できた。
1カ所は軸穴の摩耗(拡大)で、以前の修理で対応してあった。ハトメを入れてあった。以前修理したのを思い出した。修理前の状態と
修理後(途中)の状態

もう1カ所は、傘歯車の「逃げ」で、原因は嵌めた金属タガが軸受け回りの壁をえぐっていたためギアが逃げていた。金属タガのようす
           抉られた状態

修理は、えぐられた分の厚さと半径のワッシャーを入れて訂正した。

金属タガは要注意ということでした。
このおもちゃは施設のもので、人気があり、使用頻度が高い。どうしても負荷がかかってしまうのでしょう。