2024年8月16日金曜日

今だからわかる「おもちゃを買った父の気持ち」

 アラフィフの女性から人形の修理を依頼されました。40年ほど前にお父さんからおくられたおもちゃだそうです。

劣化が進み、内部の接続柱が折れ、モーターは回らない状態でした。何とか直して返却したときに、とても喜んでくれて、そのおもちゃにまつわるエピソードを語ってくれました。

「私が小学生の時、父が酔っ払っての帰り道、偶然見つけたおもちゃを買ってきたのだと思います。私に見せると『ほらこれ面白いだろ』と、とても楽しそうに動かして見せてくれました。私も喜ぶと思ったのだと思います。でも、私は、ちょっと気持ち悪いおもちゃで全然面白いともかわいいとも思いませんでした。おそらく冷ややかに眺めていただけだったと思います。父が一人で楽しんでいたのを覚えています。気に入らなかったのですが捨てもせず、そのままお蔵入りのままでした。

最近になってこのおもちゃが妙に気になり、父親の思い出が浮かび、自分が冷ややかな反応しかできなかったこと、それを父がどう思ったのだろうなどと思うようになりました。今になると父の気持ちがわかるような気がして、大切にしたい気持ちがわいてきたのです。

劣化で黄ばんでいて、セロテープの跡もそのまま、口のシールは剝がれかけています。ネットで調べるととても状態のいいものが出ていました。でも、やはり傷んだこの人形でなければ伝わってこないものがあるのに気づきました。ただ、動くようになればなおいいという思いで修理依頼しました。動かなくても大事に飾るつもりでいたのですが、動くとまたそれであの時のことを思い出すのです。うれしいです。」

そういって喜んでくれました。子供のころはお父さんとはちょっと距離感を感じる関係だったようです。でも自分が年を重ねてわかるようになったというわけです。よかったね、と一緒によろこぶことができました。彼女はこんな話もしていました。おそらくクリスマスの時の話でしょう。

「私が、人形が欲しいと父に言うと、クリスマスの日に買ってきて、夜、枕元にそっと置いてくれました。朝、目が覚めてみると確かに人形があったのですが、それはキューピー人形でした。私はリカちゃん人形のようなかわいいものが欲しかったのに。とてもがっかりして父には多分不機嫌な顔を見せたと思います。キューピー人形のほうが安かったんだろうと子供ながらに思いました。父はその時『サンタさんが、夜、やってきて置いていってくれたんだね。お人形が欲しいって言ってたから願いが叶ったんだね。よかったねえ」って。父は、子供のファンタジーを叶えてあげて、さらには、わたしが大喜びするとはずと、ワクワクしていたのかもしれません 今は、その時の父の気持ちがわかります。そのキューピー人形は手元にありません。でも、今回の、<気持ち悪い人形>を見ると、そんなことも蘇ってくるのです。」

おわり

  

2024年8月1日木曜日

オルガニート 30弁タイプ 修理不能

オルガニート記事は2度目です。


これまで見たのは20弁のものですが今回は30弁でした。

破損したのはいつもの紙送りローラーです。下の茶色いのがそれ。劣化でボロボロです。上のグレーのものは3Dプリンターで作製した20弁用のものです。
3Dプリンターで作製したのですが、どうやってもうまくいかない。
この他に、下のシャフトのはじくピンが汚れと錆で固着気味でした。これは分解洗浄できれいになりました。

思いあまってメーカーのサンキョー(現ニデックインスツルメンツ)に連絡したところ、以前に33弁のものを作っていたと言われましたが、この30弁は確かにサンキョーとあります。それはそうとして、現在は生産中止しているが部品が残っているかを調べてくれるという親切な返事が来た。結果的には部品がなく修理できないという返事でした。ちなみにローラーの材質を聞いたところ、シリコンゴムまたはウレタンゴムを使っているそうです。3Dプリンターのハードなレジンでは無理があるということですね。メーカーの丁寧な応対に好感が持てました。
Oリングを買って嵌めてみたのですがセッティングが微妙でスムーズに紙送りとピンはじきができませんでした。残念ながら諦めることにしました。
次善の策としてメーカーに相談して20弁のムーブメントに交換してもらうことを提案しました。共鳴箱はしっかりしているのでよく響くと思います。20弁だと曲のカードもいっぱい出ています。自分で作る事も出来ます。

オルガニートの構造(部品)です。(紙送りローラは写っていません)櫛歯の裏には先端にプラの薄板が貼ってあります。これは「羽根」というそうです。昔は羽根の軸を使っていたのでその名が付いたとか。一種の振動止めだそうです。
とても優しい音色です。このオルガニートを持ち込まれた年配の方もこの音に強く惹かれたそうです。オルガニートには根強いファンがいて、youtubeでは構造解説や修理法の動画がアップされています。見ていても面白いです。